【公益法人へ寄附をした場合の取り扱い】個人編

公益法人,寄附

記事の対象者

本記事は、「公益社団法人」及び「公益財団法人」へ寄附を考えている個人、または寄附者から質問を受けることの多い「公益社団法人」及び「公益財団法人」の事務局の方向けとなります。

なお、本記事では、「公益社団法人」と「公益財団法人」を総称して「公益法人」と記載します。

記事の概要

本記事では、公益法人に個人が寄附や寄贈を行った場合の取り扱いについて解説を行います。寄附者にとっての税制優遇措置の概要を主に解説するとともに、一般社団法人等への寄附との相違についても簡単に説明を行います。

なお、本記事の対象者として寄附者は、個人を想定しています。寄附者が法人の場合の取り扱いは、別の記事で解説を行います。

個人が公益法人に寄附を行った場合、確定申告を行うことにより、当該寄附を行った金額の一部が寄附者個人の所得税から控除されます。

そして、所得税から控除される方法として「所得控除」と「税額控除」という2種類の方法があります。

以下、「所得控除」と「税額控除」の違いについて解説を行います。

所得控除と税額控除の違い

まず、所得控除の説明の前に所得税の計算方法を簡単に行います。

所得税の計算は、単純化すると以下のように計算されます。

課税所得 ✕ 税率 = 所得税

上記の課税所得から寄附金相当を控除するのが所得控除となります。

計算式1

(課税所得 ― (支払った寄附金 ― 2,000円)) × 税率 = 所得税

一方、最終的な所得税から寄附金相当の40%を控除するのが税額控除となります。

計算式2

課税所得 × 税率 ―(支払った寄附金※ ― 2,000円)× 40% = 所得税

※総所得金額等の40%が上限

所得控除と税額控除の有利判定

所得控除と税額控除の両方が選択可能な場合は、税額が有利となる方を選択することになります。ここで、有利判定を行うにあたり、所得控除の式と税額控除の式を比較してみましょう。

なお、支払った寄附金か控除する2,000円は、検討の簡便化のため排除して考えます。

計算式1の所得控除の式を展開すると以下のようになります。

課税所得 × 税率 ― 支払った寄附金 × 税率

また、計算式2の税額控除の式も簡便化します(寄附金の上限も簡便化のため除外)。

課税所得 × 税率 ― 支払った寄附金 × 40%

上記の2式を比較すると所得控除と税額控除の違いは、支払った寄附金のうち税率分だけ控除できるか、40%分を控除できるかの違いということになります。

日本の所得税は、累進課税を採用しており、課税所得が増加するごとに段階的に税率が上がっていきます(一部の分離課税を除きます。)。

そして、課税所得に対する所得税の割合が40%を超えることは、例外的であるため、通常の寄附金については税額控除を選択することが有利となります。

公益法人に寄附した場合の所得控除と税額控除の選択

上記で説明したように所得控除と税額控除では、「税額控除」の方が有利となるケースが多いのですが、公益法人への寄附について、「税額控除」を選択ができるとは限りません。

所得控除については、すべての公益法人が対象となりますが、税額控除については、一定の要件を満たした公益法人に限定されます。

そのため、寄附者が税額控除を希望される場合には、事前に寄附先の公益法人に税額控除の対象となる公益法人か確認する必要があります。

なお、以下の公益法人インフォメーションのページから税額控除の対象となる公益法人を検索することも可能となっています。ただし、税額控除については、有効期間があるため、更新の有無などを含め、寄附先の公益法人に寄附前に確認することが有用となります。

【公益法人インフォメーションの税額控除対象公益法人の検索ページ】

確定申告時の注意点

最後に、公益法人への寄附を行い、確定申告時に控除を受けるためには、必要事項を記載した確定申告書に公益法人から交付を受けた寄附金の受領証(領収書)を添付(または確定申告書を提出する際に提示)する必要があります。

そのため、公益法人への寄附を行った際は、必ず領収書等を受領するようにしてください。

不動産等の寄贈の取り扱い

上記までの説明は、「個人」が「公益法人」に「現金等の金銭」の寄附を行うことの説明となります。

ここで、注意が必要となるのは、現金や預金以外の不動産や株式などの財産を寄贈する場合の取り扱いです。

現金や預金と同様に不動産や株式を無償で公益法人に寄贈する場合は、所得控除や税額控除とは、異なる検討が必要となります。

それは、個人が、不動産などの財産を公益法人に寄附した場合、原則として時価で譲渡したものとして個人の譲渡所得税が課されます。不動産や株式を受贈された公益法人ではなく、寄附を行った個人に対し、課税が生じるため、一般的な直感とも異なるため、注意が必要となります。

不動産等の寄贈の例外(租税特別措置法40条)

個人が、不動産などの財産を公益法人に寄附した場合、原則として時価で譲渡したものとして個人の譲渡所得税が課されますが、租税特別措置法40条という特例があり、一定の要件を満たすことにより上記の所得税を非課税とすることが可能です。

ただし、当該特例は、非常に複雑であり、専門家でも判断に悩むルールとなっています。租税特別措置法40条の解説は、別記事で解説しますが、「個人が不動産や株式を公益法人に寄贈」するという話が出たときは、一歩立ち止まり、慎重に判断するようにしてください。また、税務署や専門の税理士に相談するということを必ず行ってください。

なお、公益法人であれば、租税特別措置法40条の要件を自動で満たすという誤解がありますが、租税特別措置法40条と公益法人の認定基準は、一致していません。そのため、公益法人であっても租税特別措置法40条を満たさないケースは多いため、注意が必要となります。

最後に、これまで公益法人(公益社団法人、公益財団法人)に対する寄附を中心に説明を行いましたが、一般社団法人、一般財団法人に対する寄附も何らかの控除があると誤解されるケースが多々ありますが、一般社団法人、一般財団法人は、所得控除や税額控除の対象とはなりません。 ただし、前項で説明した個人が不動産や株式等を寄贈する際に適用する租税特別措置法40条は、適用することが可能となります。

以上のように、公益法人への寄附は税制上の優遇措置が受けられることが多く、所得控除と税額控除の選択適用が可能です。一般的に税額控除を選択すること方が税額が有利となりますが、税額控除はすべての公益法人が対象ではないため、寄附先の公益法人が税額控除の対象であるかを事前に確認することが重要です。また、金銭以外の資産を寄贈する場合には、租税特別措置法40条の検討が必要となるため、慎重な判断が必要となります。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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