【公益法人へ寄附をした場合の取り扱い】法人編

公益法人,寄附

記事の対象者

本記事は、「公益社団法人」及び「公益財団法人」へ寄附を考えている法人、または寄附者から質問を受けることの多い「公益社団法人」及び「公益財団法人」の事務局の方向けとなります。

なお、本記事では、「公益社団法人」と「公益財団法人」を総称して「公益法人」と記載します。

記事の概要

本記事では、公益法人に法人が寄附や寄贈を行った場合の取り扱いについて解説を行います。寄附者にとっての税制優遇措置の概要を主に解説するとともに、一般社団法人等への寄附との相違についても簡単に説明を行います。

なお、本記事の対象者として寄附者は、法人を想定しています。寄附者が個人の場合の取り扱いは、以下の記事を参考にしてください。

【公益法人へ寄附をした場合の取り扱い】個人編

決算書の費用と法人税計算上の費用の違い

株式会社等の法人が公益法人に寄附を行った場合、寄附をした金額が決算書においては費用となります。

しかし、法人税の計算上は、その一部のみが「税金計算上の費用」として取り扱われます。

このように、決算書における取り扱い(会計上の取り扱い)と法人税計算における取り扱い(税務上の取り扱い)は、異なることが多いため注意が必要となります。

ここで、上記の「税金計算上の費用」として認められる金額の上限のことを「損金算入限度額」といいます。

ここで、株式会社等が公益法人に寄附を行った場合の「損金算入限度額」は、「一般寄附金の損金算入限度額」と「特別損金算入限度額」の合計額となります。

なお、株式会社等が他の営利法人等に寄附を行った場合は、「一般寄附金の損金算入限度額」の適用のみ受けることができ、「特別損金算入限度額」の適用を受けることは出来ません。

そのため、公益法人に対する寄附は、「特別損金算入限度額」の金額だけ他の法人形態への寄附と比較し、優遇されていることになります。

以下、「一般寄附金の損金算入限度額」と「特別損金算入限度額」について解説します。

損金算入限度額

一般寄附金の損金算入限度額と特別損金算入限度額は、以下の式により計算されます。

区分計算式
一般寄附金の損金算入限度額(資本金等の額 × 0.25% + 所得金額 × 2.5%) × 1/4
特別損金算入限度額(資本金等の額 × 0.375% + 所得金額 × 6.25%) × 1/2

上記の計算式のうち、資本金等の額とは、資本金と資本準備金の合計に減資や自己株式の増減を調整した金額となりますが、理解を優先するため、ここでは、資本金と資本準備金の合計と考えてください。

次に、所得金額は、決算書の利益から法人税の計算に必要な調整を行った後の法人税計算の根拠なる金額ですが、こちらも理解を優先するため、ここでは、決算書の税引前の利益に支払った寄附金を加算した寄附金と税金を控除する前の利益と考えてください。

資本金がない法人の場合の取り扱い

寄附金の損金算入限度額の計算式には、「資本金等の額」が含まれています。

では、そもそも資本金がないようなNPO法人などが公益法人に寄附を行った場合の損金算入限度額はどのように計算されるのでしょうか?

NPO法人など資本金という概念が存在しない法人が寄附を行った場合には、別途、以下のような計算式を用いて損金算入限度額の計算を行うことになります。

区分計算式
一般寄附金の損金算入限度額所得金額 × 1.25%
特別損金算入限度額所得金額 × 6.25%

計算例で考える日本の寄附税制の問題点

以下の小規模のA社と比較的規模の大きいB社の事例で考えてみましょう。

(端数処理は簡便化のため無視)。

事例:A社

資本金等の額:1千万円、所得金額:2百万円、寄付金額:2百万円

A社の損金算入限度額の計算

一般寄附金の損金算入限度額:(資本金等の額1千万円 × 0.25% + 所得金額2百万円 × 2.5%) × 1/4 = 18,750円

特別損金算入限度額:(資本金等の額1千万円 × 0.375% + 所得金額2百万円 × 6.25%) × 1/2 = 81,250円

合計:100,000円

事例:B社

資本金等の額:1億円、所得金額:1千万円、寄付金額:2百万円

B社の損金算入限度額の計算

一般寄附金の損金算入限度額:(資本金等の額1億円 × 0.25% + 所得金額1千万円 × 2.5%) × 1/4 = 125,000円

特別損金算入限度額:(資本金等の額1億円 × 0.375% + 所得金額1千万円 × 6.25%) × 1/2 = 500,000円

合計:625,000円

A社とB社の比較

A社とB社は、同様の2百万円を寄附しているのにも関わらず、A社は10万円のみ税務上の費用として取り扱われ、B社は62万5千円が税務上の費用として取り扱われます。

このように日本の法人税では、寄附金を支払った場合、すべての法人が一律の控除を受けられる訳ではなく、資本金や利益が大きい法人の方が税制優遇を受けることになります。

また、計算式に「所得金額」が含まれるため、実際に決算が確定しないと寄附金に対しどれくらいの税制優遇が得られるか判断も難しくなっています。

さらに、計算式も複雑であり、一般の納税者の理解を困難にしています。

国のため、困っている人を助けるために寄附をした法人に対し、法人規模等に関係なく、かつシンプルな税制優遇措置を設けることが、我が国の寄附文化の醸成に繋がると考えます。

前項までの説明は、株式会社等の法人が公益法人に金銭を寄附することを前提にしていました。

ここからは、金銭ではなく、土地などの現物資産を公益法人に寄贈した場合を考えます。

法人が公益法人等に土地などの現物資産を寄贈した場合、当該寄贈は、時価で譲渡したものとして取り扱われます。

例えば、2百万円で購入した土地の時価が1千万円であり、当該土地を公益法人に寄贈した場合、土地を1千万円で譲渡したものと見做し、1千万円と2百万円の差額の8百万円が譲渡益として扱われます。

理解のため仕訳で表現すると以下のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
寄附金10,000,000円土地2,000,000円
譲渡益8,000,0000円

なお、上記の寄附金1千万円が全額費用となるわけではなく、前項まで計算した一般寄附金の損金算入限度額、特別損金算入限度額で算定して損金算入限度額までしか税務上の費用とは認められません。

そのため、土地等を公益法人に寄贈した場合、寄贈した法人に課税される可能性があります。

実際の土地等の時価は、本事例よりも高額であるケースもあります。その場合、寄贈した法人の納税額も高額になる可能性があるため、土地等を他の法人に寄贈する場合は、慎重な対応が求められます。金額的な影響が大きい話ですので、必ず、事前に税務署や税理士等の専門家に相談するようにしてください。

最後に、前項までの話は、株式会社等の法人が公益法人に対する寄附を行った場合の話となりますが、公益法人とよく誤解される法人である一般社団法人や一般財団法人への寄附の取り扱いについても簡単に解説します。

法人が一般社団法人や一般財団法人への寄附を行った場合は、公益法人への寄附と異なり、一般寄附金の損金算入限度額のみ適用を受けることが可能です。そのため、一般社団法人や一般財団法人への寄附というのは、株式会社などの営利法人に対して行う寄附と同じ扱いということになります。

公益法人への寄附に関する法人の取り扱いは、会計上と税務上で異なるため、注意が必要となります。

特に、税務上認められる損金算入限度額には制限があり、その計算には資本金や所得金額が影響することになります。そのため、大企業と中小企業では、同額の寄附を行っても税務上の控除額に大きな差が生じることがあります。

また、土地等の金銭以外の寄贈を行う場合、譲渡益が発生し寄贈を行った法人が課税対象となる可能性があるため、慎重な対応が求められます。

さらに、一般社団法人や一般財団法人への寄附については、一般寄附金の損金算入限度額のみ適用されるため、公益法人への寄附と比べて税務上の優遇措置が少ない点にも留意する必要があります。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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