【公益法人における利益相反取引】

公益法人,利益相反取引

本記事の対象者

本記事は、「公益社団法人」「公益財団法人」「一般社団法人」「一般財団法人」の事務局の方、理事や監事の方向けの内容となります。

なお、本記事内では、「公益社団法人」「公益財団法人」「一般社団法人」「一般財団法人」を総称して「公益法人」と記載します。

本記事の概要

本記事は、公益法人における利益相反取引の説明と必要な承認等の手続きについて解説を行います。また、公益法人が利益相反取引を行う場合は、特別の利益供与についても同時に検討が必要となるため、特別の利益供与についても概要と注意点を解説します。

公益法人が利益相反取引に該当する取引を実施する場合、理事会等の承認等の一定の手続きが必要となります。

まず、利益相反取引とは、どのような取引をいうのか解説します。

ここで、利益相反取引は、直接取引と間接取引の2種類に分類されます。

直接取引

最初に直接取引とは、公益法人と当該公益法人の理事が当事者として(自己のため)、又は他人の代理人・代表者として(第三者のために)行う財産の譲受け・譲渡、金銭の貸借等の取引をいいます。

理事が当事者として(自己のため)に行う取引とは

直接取引のうち理事が当事者として行う取引としては、例えば、公益法人が当該公益法人の理事にセミナーの講師を依頼し、講師料を支払うという取引を行う場合が想定されます。

上記のように公益法人と当該公益法人の理事が直接当事者となり取引を行う場合は、利益相反取引に該当します。

他人の代理人・代表者として(第三者のために)に行う取引とは

直接取引のうち他人の代理人・代表者として(第三者のために)に行う取引としては、例えば、公益法人が当該公益法人の理事が代表取締役となっている株式会社に補助金を支給する場合が想定されます。

上記のように公益法人と当該公益法人の理事が代表を務める法人と取引を行う場合は、利益相反取引に該当します。

間接取引

次に、間接取引とは、公益法人が当該公益法人の理事以外の者との間で行う公益法人と理事との間の利害が相反する取引をいいます。

間接取引としては、例えば、公益法人が当該公益法人の理事やその配偶者等の債務を保証する行為があります。また、公益法人と当該公益法人の理事が実質的に支配している法人と取引を行う場合も間接取引として利益相反取引に該当する可能性があります。

利益相反取引の判断をするうえでの留意点

利益相反取引は、形式的な判断だけでなく、取引の内容等から実質的に公益法人の犠牲において当該公益法人の理事の利益を図る取引となるかどうかで判断を行う必要があります。

そのため、実施予定の取引が利益相反取引に該当するか判断に迷う事例も生じることが想定されます。

利益相反取引であるか判断に迷う取引が生じることが想定される場合は、当該取引について利益相反取引に該当するものと見做し、以降で説明を行う利益相反取引を行うにあたり必要となる手続きを行うことがリスク回避の観点から有用と考えます。

理事会等よる事前の承認

利益相反取引に該当する場合、取引の相手方、取引の種類・数量・価格、取引期間等の当該取引に関わる重要な事実を開示して理事会の承認を得る必要があります。

ただし、利益相反取引の当事者となる理事は、特別の利害関係を有する理事となるため理事会において議決権を行使することはできないため注意が必要となります。

なお、理事会非設置の一般社団法人及び一般財団法人の場合は、社員総会の承認を得る必要があります。

ここで、利益相反取引が行われることによる公益法人への損害を防止するという観点を考慮すると取引が行われる前に理事会等での承認を行うことが望まれますが、事後的に追認することも可能とされています。

理事会への事後の報告

公益法人の理事が利益相反取引をした場合、遅滞なくその取引についての重要な事実を理事会に報告する必要があります。

なお、間接取引のように理事以外の者との間でする公益法人と当該公益法人の理事との利害が相反する取引である場合には、代表理事等の公益法人を代表して取引を行った理事が報告義務を負うことになります。

公益社団法人及び公益財団法人の場合は、法令により特別の利益の供与が禁止されており、非営利型の一般社団法人、非営利型の一般財団法人の場合は、非営利型の要件として特別の利益供与を行わないことが条件となっています。

非営利型の要件等については、以下の記事も参考にしてください。

【非営利型の一般社団法人等とは】

そして、利益相反取引は、公益法人と当該公益法人の理事との利益が相反する取引であり、その性格上、特別の利益供与に該当するケースが多くあります。

そのため、利益相反取引として理事会等の承認を行う場合は、必ず特別の利益供与に該当しないかについても検討する必要があります。

特別の利益供与とは

ここで、特別の利益供与とは、利益を与える個人又は団体の選定等に合理性や妥当性がなく金銭等を供与する行為や社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益を供与する行為をいいます。

ただし、特別の利益についての形式的な定義はなく、各取引について個別に判断を行う必要があります。

なお、特別の利益については、以下の記事も参考となります。

【公益法人における特別の利益】

特別の利益事例

例えば、特定の団体に対し何の検討も行わず毎年100万円の補助金や寄附金を拠出している場合は、利益を与える団体の選定等の合理性や妥当性を欠くとして特別の利益供与に該当する可能性があります。

また、市場価格が1億円の公益法人の財産を1円で第三者に売却する取引なども市場で売買すれば得られたであろう利益を逸失していることから社会通念に照らして合理性を欠く取引として特別の利益供与に該当する可能性があります。

よくある誤解

ここでよくある誤解ですが、利益相反取引は、必要な手続きを行えば実施することが可能となりますが、当該取引が利益相反取引であり、かつ特別の利益供与となる場合には、公益社団法人、公益財団法人、非営利型の一般社団法人、非営利型の一般財団法人は、特別の利益供与となる取引を行うことが出来ないため、当該取引を行うことができません。

本記事では、公益法人における利益相反取引について解説を行いました。

どのような取引が利益相反取引に該当するのかを理解し、必要な手続きを行うことが重要となります。

また、利益相反取引検討時には、必ず特別の利益供与についても検討をすることも必要となります。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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