【公益法人における特別の利益】

公益法人,特別の利益

本記事の対象者

本記事は、「公益社団法人」「公益財団法人」「一般社団法人」「一般財団法人」の事務局の方向けの記事となります。

なお、本記事内では、「公益社団法人」「公益財団法人」を総称して「公益法人」、「一般社団法人」「一般財団法人」を総称して「一般社団法人等」と記載し、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」を「認定法」、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を「一般法人法」と記載します。

本記事の概要

本記事では、特別の利益についての解説を行います。

法律上の内容について解説だけでなく、特別の利益供与に該当しないための対応策についても説明を行います。

なお、特別の利益に該当しないための対応策については、著者の実務的な経験に基づく私見を含んでいますので、1つの考え方として参考にしてください。

特別の利益供与が制限されている法人

公益法人は、公益認定基準の1つとして「特別の利益」を与えないことが定められています。そのため、公益法人が特別の利益に該当する行為を行うと認定法違反となり、公益認定が取消しとなる可能性があります。

また、非営利型の一般社団法人等は、非営利型の要件の1つとして「特別の利益」を与えることを決定し、又は与えたことがないことが条件とされています。

そのため、非営利型の一般社団法人等が特別の利益に該当する行為を行うと非営利型を否認され、一般社団法人等の財産や収益の状況によっては多額の納税が必要となるケースも想定されます。

なお、非営利型の一般社団法人等の概要と非営利型の要件を否認された場合の事例については、以下の記事が参考になります。

以下、どのような行為が特別の利益に該当するのか解説を行います。

認定法上の特別の利益

まず、公益法人において問題となる可能性がある公益認定基準における特別の利益の概要を解説します。

認定法において「特別の利益」に関する定義はありません。

そのため、公益認定等ガイドラインに記載されている特別の利益の解説を参考にすることにします。

公益認定等ガイドラインでは、特別の利益とは、利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、事業の内容や実施方法等具体的事情に即し、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇がこれに当たるとしています。

なお、寄附を行うことが直ちに特別の利益に該当するものではないとされています。

法人税法上の特別の利益

次に、非営利型の一般社団法人等において問題となる可能性がある法人税法における特別の利益の概要を解説します。

法人税法基本通達1-1-8において特別の利益を与えることとは、例えば,次に掲げるような経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付で,社会通念上不相当なものをいうとしています。

法人税法基本通達の例示

  1. 法人が,特定の個人又は団体に対し,その所有する土地,建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。
  2. 法人が,特定の個人又は団体に対し,無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること。
  3. 法人が,特定の個人又は団体に対し,その所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。
  4. 法人が,特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地,建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。
  5. 法人が,特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。
  6. 法人が,特定の個人に対し,過大な給与等を支給していること。

特別の利益の検討にあたっての注意点

上記1~6は、例示であり、1~6以外であっても経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が行われると判断されるものも特別な利益を与えることに該当する可能性があります。

また、「特別の利益を与えること」には,法人税法上の収益事業に限らず,収益事業以外の事業において行われる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が含まれることに留意が必要となります。

なお、公益社団法人等に対して当該法人が行う公益目的事業のためにする寄附等は、「特別の利益を与えること」には該当しないものとされている(平成20年7月2日付課法2-5ほか1課共同「法人税基本通達の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明について)。

時価のある財産を譲渡するにあたり時価で譲渡を行う場合など、取引金額を合理的に算定することができる場合は、当該時価で取引を行うことにより特別の利益の提供を回避することが可能となります。また、公益法人の行う公益目的事業として行う行為は、公益認定申請時に行政庁による確認が行われているため特段問題になることはありません。

しかし、公益法人や非営利型の一般社団法人等が社会貢献活動の一環として寄附や補助金等の支出することが多くあります。

公益法人や非営利型の一般社団法人等は、当該寄附や補助金等を他団体等に交付する場合、特別の利益の提供に該当しないためには、当該行為が認定法に記載されている「社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇」に該当しないこと、法人税法に記載されている「社会通念上不相当なもの」でないことを事前に検討しなければなりません。

社会通念に照らして相当であることの判断基準

どのような行為が社会通念上不相当なものであるかについては、明文の定めがありません。そのため、公益法人や非営利型の一般社団法人等が行う他団体等への寄附や補助金等が社会通念上想定であるとするためには、公益法人が公益目的事業として寄附や補助金等の支給を行う場合と同程度のルールを設けることが有用と考えます。

以下、寄附や補助金等の支給を行う場合を想定し、著者の経験に基づき参考となるチェック事項を列挙しました。

なお、当該チェック項目は、著者の私見に基づくものであり、最終的な税務判断は、顧問税理士等と相談のうえ、検討するようにしてください。

寄附や補助金等を支給する際のチェック項目

  • 寄附や補助金等の支給の目的は、特定の個人や団体の利益になるのではなく、不特定多数の利益となるものであるか?
  • 寄附や補助金等の支給先の選定は、特定の個人や団体を限定する形式になっていないか?(同じ個人や団体に寄附する形式になっていないか?)
  • 寄附や補助金等の支給先の募集は、Webページを活用するなど、広く募集を行っているか?
  • 寄附や補助金等の支給先の募集を行わない場合には、助成先の選定方法、選定理由が明確になっているか?
  • 寄附や補助金等の支給に関するルール(募集方法、選定方法、選定理由、選定基準、公表方法、報告方法など)が規程などで明記されているか?
  • 寄附や補助金等の支給先の決定は、利害関係者を排除した選定委員会など独立した機関を設置して行っているか?選定委員会を設置せず、理事会が決定する場合には、独立性や専門性に問題はないか?
  • 上記の選定委員会のメンバーには、必要の専門家などが含まれているか?
  • 寄附や補助金等の支給先への助成金額は、合理的な金額(支給先の規模等から勘案し不相当に高額となっていないか)となっているか?
  • 寄附や補助金等の内容、支給先、金額等を公表しているか?
  • 寄附や補助金等の支給先から使用した金額に関する報告書(収支報告など)を入手しているか?

公益法人や非営利型の一般社団法人等が特別の利益供与を行わないためには、法律や社会通念に基づいた適切な判断が求められます。

特別の利益に該当する行為は、公益法人の認定取消しや非営利型法人としての非営利型の要件を満たすことができないという重大なリスクを伴います。

そのため、取引や寄附・補助金等の支給に際しては、特定の個人や団体に対して不相当な利益が供与されないよう、厳格なチェック体制と透明性の確保が不可欠となります。

本記事で紹介したチェック項目を活用し、各法人が自らの行為が社会通念上妥当であることを確認し続けることが、公益性の維持と法令遵守に繋がります。

最終的な税務判断については、必ず専門家と相談し、適切な対応を行うことが重要となります。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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