【備え置き書類と閲覧請求】公益法人対象

公益法人,備え置き書類

本記事の対象者

本記事は、「公益社団法人」「公益財団法人」の事務局の方、これから「公益社団法人」「公益財団法人」を目指す方向けの記事となります。

なお、本記事では、「公益社団法人」「公益財団法人」を総称して「公益法人」と記載し、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」を「認定法」と記載しています。

本記事の概要

公益法人以外の法人では、備え置き書類について問題となることはあまりないと想定されます。

しかし、公益法人の場合は、立入検査において備え置き書類の状況の確認が行われます。

また、公益認定時には、備え置き書類の閲覧請求の対応可能性について論点になることも多々あります。

そこで、本記事では、備え置き書類の種類を整理するとともに、閲覧請求の論点である常勤職員がいない場合の対応策、改正が予定されている認定法に基づく変更点を中心に解説を行います。

公益法人は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するために活動することが求められています。

そのため、公益法人を運営するにあたり、透明性が確保されている必要があります。

そこで、認定法では、誰もが、公益法人の業務時間内は「財産目録等」について閲覧の請求ができることになっています。

また、正当な理由がない場合は、閲覧請求を拒むことができません。

上記のような閲覧請求に対応するため、公益法人は、法令で定められた書類が法人の事務所に適切に備え置かれ、閲覧可能な状態になっていることが求められます。

備え置き書類とは

まず、備え置き書類としてどのような書類があるか解説します。

以下に記載した書類を公益法人は、備え置く必要があります。

事業計画関係

書類名備考
事業計画書
収支予算書
資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類
主たる事務所に毎事業年度開始の日の前日から当該事業年度の末日までの間、従たる事務所に写しを備え置く必要があります。

決算書関係(財産目録除く)

書類名備考
貸借対照表(注記を含む)及びその附属明細書
損益計算書(注記を含む)及びその附属明細書
事業報告及びその附属明細書
監査報告
会計監査報告(会計監査人設置法人)
主たる事務所に定時社員総会又は定時評議員会の日の2週間前の日のから5年間、従たる事務所に写しを3年間、備え置くこと必要があります。

決算書以外で事業報告等の定期提出書類に関係する書類(財産目録含む)

書類名備考
財産目録
役員等名簿
役員報酬等の支給基準
キャッシュ・フロー計算書(会計監査人設置法人のみ)
運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類
主たる事務所に毎事業年度の経過後3か月以内から5年間、従たる事務所に写しを3年間、備え置く必要があります。
社員名簿(公益社団法人のみ)主たる事務所に常時、備え置く必要があります。
特定費用準備資金の積立限度額やその算定の根拠等について記載された書類
資産取得資金の目的である財産の取得(又は改良)に必要な最低額やその算定の根拠等について記載された書類
5号財産及び6号財産の内容等について記載された書類
認定法第21条に基づき備置き及び閲覧等の措置が講じられている必要があります。

定款

書類名備考
定款主たる事務所及び従たる事務所に常時、備え置く必要があります。

備え置き書類の留意事項

なお、閲覧書類のうち役員等名簿と社員名簿については、当該公益法人の社員又は評議員以外の者から請求があった場合には、個人の住所部分を除外して閲覧させることができるとされています。

また、財産目録等については、個人情報の保護等の観点から公表できない情報が記載されており、当該情報を開示することが法令違反となる場合には、法令違反となる限度において閲覧の対象から除外することができます。

ただし、上記のような対応を行う場合は、行政庁にその旨の報告をしなければならないとしています。

上記で記載した書類については、閲覧用としてファイリングし取り出しやすい場所に置いておくのが望ましいとされています。

その他の備え置き書類

議事録についても備置きが必要となるため留意が必要です。

書類名備考
社員総会又は評議員会の議事録開催の日から10年間、主たる事務所に、写しを従たる事務所に5年間、備え置く必要があります。
理事会の議事録開催の日から10年間、主たる事務所に備え置く必要があります。

備え置き書類の閲覧請求の論点

次に、閲覧請求について解説します。

認定法では、誰もが、公益法人の業務時間内は「財産目録等」について閲覧の請求ができ、正当な理由がないのにこれを拒んではならないことになっています。

そのため、常勤の役員や職員がいない公益法人の場合、事務所に誰もいないことが多くあり、突然の閲覧請求に対応できないという問題が生じます。

特に、近年は、テレワークの普及や労働環境の変化、IT技術の発展に伴い、常勤の役員や職員がいない公益法人も多くなっていることから閲覧請求の対応が問題となります。

常勤の役員や職員がいない場合の対応策

まず、常勤役員や職員がいない場合の対応策としては、閲覧請求に対応する「業務時間」の考えを整理する必要があります。

ここで、「業務時間」は、公益法人の実施事業及び法人運営(外部からの問い合わせへの対応を含む)を適切に実施できる「業務時間」とされています。

そのため、閲覧の権利を定めた法律の趣旨に反することのないよう、事業の実態に即して、常識的・合理的な範囲で業務時間を定める必要があります。

なお、上記に応じて業務時間を定めると業務時間が短くなる場合には、公益法人のWebサイトに備え置き書類を掲載し、公表する等の措置を講じることで対応が可能です。

最後に、認定法の改正が予定されており、当該改正に伴い公益認定等ガイドラインも改正が予定されています。

ここでは、現状公表されている公益認定等ガイドラインの素案について解説します。

当該改正案では、備え置き書類の改正内容も公開されており、一部書類名等の変更や追加が行われています。

以下に記載した書類が公益認定等ガイドラインの素案に記載されている備え置き書類となります。

なお、書類名等が変更になっている箇所については、太字で記載しています。

  • 事業計画書
  • 収支予算書
  • 資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類
  • 公益目的事業の種類及び内容・収益事業等の内容
  • 財産目録
  • 役員等名簿
  • 報酬等支給基準
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 運営組織等概要
  • 事業活動等概要
  • 定款
  • 社員名簿
  • 貸借対照表及びその附属明細書
  • 損益計算書及びその附属明細書
  • 事業報告及びその附属明細書
  • 監査報告
  • 会計監査報告
  • 中期的収支均衡の書類
  • 公益目的事業比率の書類
  • 使途不特定財産の書類
  • 公益充実資金の書類
  • 公益目的事業継続予備財産の書類
  • 特定費用準備資金の書類
  • 資産取得資金の書類
  • 指定寄附資金の書類

本記事では、公益法人における備え置き書類と閲覧請求に関する重要なポイントを整理しました。

まず、公益法人は、透明性を確保するために、法令で定められた書類を適切に備え置き、誰もが閲覧できる状態にしておく義務があります。

そのうえで、常勤の役員や職員がいない場合は、閲覧請求に対応できないという問題に対応する必要があります。

そこで、常勤の役員や職員がいない場合の対応策については、業務時間の設定やWebサイトでの情報公開などの手法を解説しました。

また、今後予定されている認定法の改正に伴い、備え置き書類の内容が一部変更となる可能性についても解説しています。

なお、本記事においては、今後、改正の方針が明確になり次第、記事内容の更新を行います。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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