公益法人の懇親会と公益目的事業
記事の対象者
本記事は、「公益社団法人」「公益財団法人」等の公益法人で懇親会などを実施している事務局の方、これから公益法人を目指す「一般社団法人」「一般財団法人」の事務局の方向けの記事となります。
なお、本記事内では、「公益社団法人」「公益財団法人」を総称して「公益法人」と記載します。
記事の概要
公益法人の実施する懇親会、パーティーなどの飲食を伴う事業が公益目的事業となり得るか、またその注意点について解説します。
なお、本記事内では、飲食を伴う懇親会やパーティーなどを総称して「懇親会」と記載します。
公益法人の懇親会の実務上の問題点(2025年3月以前)
公益法人は、公益目的事業に付随する事業として飲食を行う懇親会を行うことがあります。
しかし、公益認定等ガイドラインの改正以前(2025年3月以前)は、当該懇親会の公益目的事業として扱って良いかなどの判断にあたり行政庁の担当者や認定等委員会の委員により異なる指導がされていました。
そのため、当該懇親会が公益目的事業として計上してよいのか公益認定申請時や変更認定時にどのように対応して良いか判断に迷う状況にありました。
ここで、公益認定等ガイドラインが改正に伴い、飲食を伴う懇親会やパーティーの取扱について公開されています。
以降、当該公益認定等ガイドライン(2025年4月以降版)の内容を解説します。
公益認定等ガイドラインの解説(2025年4月以降)
懇親会は公益目的事業に該当するか?
公益法人が行う飲食を伴う懇親会が公益目的事業となるかについて解説します。
まず、当該判断においては、公益目的事業として費用を負担して飲食を提供する行為が当該公益目的事業の趣旨・目的に照らした合理性が必要となるとされています。
そして、当該公益目的事業の趣旨・目的に照らし、当該飲食の提供を行う懇親会を行うことに合理的な理由があり、相当の範囲で行う飲食の提供は、公益目的事業として認められることが公益認定等ガイドラインにより明記されています。
公益目的事業となる懇親会の事例
次に、どのような懇親会や飲食の提供が公益目的事業として認められるか公益認定等ガイドラインでは、以下の事例を示しています。
- 表彰等に係る「晴れ」の場としてパーティーを開催
- 重要な事業を遂行するために理解を得ることが不可欠な要人の接待
- 外部の関係者を招いて開催する会議における食事
- 弁当等の提供
- 公益目的事業への協力者等への茶菓の提供等
上記の例からどのような基準により懇親会が公益目的事業として認められるかは明確ではありません。
そのため、公益認定や変更認定時の申請書において公益目的事業とすることの合理性の説明が重要になると考えられます。
小規模な懇親会の取扱
さらに、公益認定等ガイドラインでは、幹となる事業の効果的な実施等のために付随的に、小規模で行われる懇親会やパーティー、食事の提供については、申請書の記載は不要とされています。
どの程度の規模を小規模と扱うかについては、公益法人の規模等により異なると想定されます。
しかし、懇親会やパーティーなどの会合としての形式があり、計画的に実行されるイベントについては、申請書に記載することを前提に公益目的事業とすることの合理性等について説明が可能となるように準備をしておくことが有用と考えます。
公益法人の懇親会と特別の利益との関係
最後に、飲食の提供を伴う懇親会において飲食の費用を公益法人が負担することと、特別の利益との関係について整理します。
ここで、公益法人は、「特別の利益」を与えてはならないことが公益認定基準の1つとされています。
「特別の利益」とは、利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、事業の内容や実施方法等具体的事情に即し、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇がこれに当たるとしています。
当該特別の利益については、個別に判定を行う必要があります。
なお、特別の利益についての詳細は、以下の記事が参考となります。
そして、飲食の費用を公益法人が負担することの特別の利益の取扱に関して公益認定等ガイドラインでは、公益法人の関係者に対して特別の利益を与えるおそれ、役員に関して、役員報酬等の支給の基準に従った報酬等の支給への違反のおそれがあることを記載しています。
そのため、公益認定等ガイドラインでは、相当額の支出が想定される場合には、規程を定め、公益法人のガバナンスの下、透明性をもって支出を行うことが望ましいとされています。
まとめ
本記事では、公益認定等ガイドラインの改正に伴い取扱が明確となった飲食を提供する行為や懇親会、パーティーなどのイベントを公益法人の公益目的事業として取り扱うことの可否について解説を行いました。
ここで、懇親会を公益目的事業として申請するためには、公益目的事業の趣旨・目的に照らして合理性の説明が重要となります。
また、飲食の費用を公益法人が負担する場合には、特別の利益の提供に該当しないかについても留意が必要となります。