公益法人の変更認定と変更届出とは
記事の概要
公益法人は、その事業内容等に変更が生じた場合、事前に行政庁に認定を受ける必要がある変更認定と事後に届出を行うのみで良い変更届出という2種類の手続きがあります。
ここで、本記事では、変更認定を行う必要がある事項と変更届出を行う事項について解説を行います。
記事の対象者
本記事は、「公益社団法人」「公益財団法人」の事務局の方、理事や監事の方向けの記事となります。
なお、本記事内では、「公益社団法人」「公益財団法人」を総称して「公益法人」と記載し、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」を「認定法」と記載しています。
2025年3月までの変更認定と問題点
まず、2025年3月までの認定法における変更認定の事項と問題点について解説します。
2025年3月以前の認定法では、以下の事項について軽微な変更に該当する場合を除き、事前に行政庁の認定を受けることとされていました。
- 公益目的事業を行う区域等
- 公益目的事業の種類及び内容
- 収益事業等の内容について変更する場合
ここで、軽微な変更とは、「公益目的事業を行う区域等」について行政庁の変更を伴わない区域等の変更、「公益目的事業の種類及び内容」及び「収益事業等の内容について変更する場合」について「申請書記載事項の変更を伴わないもの」とされていました。
そして、上記の「申請書の変更を伴わないもの」については、事業の公益性についての判断が明らかに変わらず、申請書の参考情報として記載されているに過ぎない事項の変更と考えられる場合とされていましたが、どのような場合に軽微となるか基準が曖昧であるという問題がありました。
2025年4月以降の変更認定
次に、2025年4月以降の認定法の改正に伴う変更認定の事項の変更点を解説します。
認定法の改正概要
2025年3月までの変更認定の項目が曖昧であるという問題を解消するため、変更認定を行う項目について以下のような見直しが行われました。
- 収益事業等の内容の変更は、変更届出とする
- 事業の一部廃止は、変更届出とする
- 事業の統合、再編、承継その他の変更であって当該変更後の事業が引き続き公益目的事業に該当することが明らかであるものは、変更届出とする
- 申請書記載事項の変更を伴わないものについては、申請書の記載事項そのものを見直すことで対応する
「申請書記載事項の変更を伴わないもの」については、事業報告等の定期提出書類の記載事項の明確化と一体的に行われるものとなります。
なお、事業報告等の定期提出書類の事業内容の記載事項の変更については、以下の記事も参考となりますので、参照してください。
上記の変更に伴い、変更認定が必要な事項は、以下の2つとなります。
- 行政庁の変更を伴う公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更
- 公益目的事業の種類又は内容の変更
以下、上記の変更認定事項について解説を行います。
行政庁の変更を伴う公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更
まず、公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更が生じた場合については、2025年3月までの内容と変更はありません。
そのため、管轄の行政庁が内閣府から各都道府県に変更になる場合、または各都道府県から内閣府に変更になる場合のみ変更認定の手続きが必要となります。
ここで、管轄の行政庁は、公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所が複数に及ぶ場合には内閣府が管轄となり、公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所が特定の都道府県のみの場合には、当該都道府県が管轄となります。
したがって、公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所が特定の都道府県から複数の都道府県に範囲を広げる場合、または複数の都道府県から特定の都道府県に限定する場合には、変更認定の手続きを行うことになります。
公益目的事業の種類又は内容の変更
次に、公益目的事業の種類又は内容の変更について解説します。
変更認定の対象から除外される事項
公益目的事業の変更にあたり、以下の事項については、変更認定申請が不要とされました。
- 公益目的事業の一部廃止
- 事業の統合、再編、承継その他の変更であって当該変更後の事業が引き続き公益目的事業に該当することが明らかであるものとして、内閣総理大臣が定めるもの(以下、「公益目的事業の統廃合」とする)
- 公益目的事業の一部廃止、公益目的事業の統廃合のほか、申請書記載事項の変更を伴わないもの
種類の変更
まず、公益目的事業の種類の変更については、公益目的事業の一部廃止を除き、変更認定が必要となります。
内容の変更
次に、公益目的事業の内容の変更については、公益目的事業の統廃合、申請書記載事項の変更を伴わないものを除き、変更認定が必要となります。
ここで、2025年4月以降の申請書には、事業内容のうち公益目的事業の趣旨・目的、事業概要、受益の機会、受益者の義務、事業の合目的性確保の取組といった原則的な記載のみを行うこととされ、詳細については事業計画等に記載することとなりました。
そのため、申請書の記載項目が原則的な記載のみとなったことに伴い、変更認定の対象となる事業の変更も限定的になると想定されます。
2025年4月以降の変更届出
最後に、2025年4月以降の認定法の改正に伴う変更届出の変更点について解説します。
認定法の改正概要
2025年3月まで変更認定の対象であった以下の事項については、2025年4月以降は変更届出の対象となり、事後の届出のみで対応可能となりました。
- 収益事業等の内容の変更
- 公益目的事業の一部廃止
- 公益目的事業の統廃合
変更届出項目
2025年4月以降、以下の事項が変更届出の対象として整理されました。
なお、下記の項目は、理解しやすさを優先し、表現を簡易に記載しています。
- 公益法人の名称又は代表者の氏名の変更
- 理事、監事及び評議員の氏名
- 会計監査人の氏名若しくは名称
- 理事、監事及び評議員の報酬等の支給の基準
- 定款
- 行政庁の変更を伴わない公益目的事業の実施区域又は事業所の所在場所の変更
- 公益目的事業の一部廃止
- 公益目的事業の統廃合
- 収益事業等(収益事業又はその他事業)の内容の変更
- 申請書記載事項の変更を伴わないもの
- 事業等を行うに当たり法令上必要となる行政機関の許認可等
まとめ
公益法人がその事業内容や組織体制を変更する場合、事前に行政庁の認定を受ける「変更認定」と、事後に届出を行うのみで済む「変更届出」があります。
そして、2025年4月以降の法改正により、変更認定が必要となる事項が絞り込まれ、一定の要件を満たす場合には事後の届出で対応可能となりました。
そのため、上記改正に伴い、事業の軽微な変更や公益目的事業以外の事業を開始する場合などについては、スムーズな事業展開が可能となります。
しかし、収益事業等を新たに開始する場合には、2025年3月以前のように行政庁による公益認定基準や財務三基準について事前の確認がされないこととなるため、事業開始後に公益認定基準を満たさないことに気付くということも想定されます。
そのため、2025年4月以降は、各公益法人が認定法について理解し、準備を進める必要があります。