【公益法人の事業内容】申請書記載方法

公益法人,事業内容

記事の対象者

本記事は、「公益社団法人」「公益財団法人」の事務局の方、これから公益法人を目指す「一般社団法人」「一般財団法人」の事務局の方を対象としています。

なお、記事内では、「公益社団法人」「公益財団法人」を総称して「公益法人」と記載します。

記事の概要

本記事では、公益認定等ガイドラインの改正案により公表されている公益認定申請書や事業報告等の定期提出書類に記載する事業内容についての記載方法について解説します。

公益法人は、公益認定申請書や事業報告等の定期提出書類に「公益目的事業の種類及び内容」を記載することとされており、当該申請書に記載した事業のみを実施することができます。

ここで、公益法人は、申請書記載事項に従って公益目的計事業を実施することが求められ、申請書記載事項から読み取れることができない事業や、申請書記載事項に従って実施されない事業は、公益目的事業として認められません。

そのため、「公益目的事業の種類又は内容の変更」をしようとするときは、軽微な変更の場合を除き、変更認定の申請が必要となります。

なお、公益法人が実施できる事業については、以下の記事が参考となります。

【公益法人が実施できる事業とは】

公益法人制度改正以前は、公益認定申請書や事業報告等の定期提出書類に記載する事業内容については、ルールが設けられておらず、公益法人ごとに異なる記載形式となっていました。

そのため、内閣府等の行政庁の担当者や公益認定等委員会の委員の判断により記載内容について異なる指導がなされていました。

特に、実績や規模等の詳細項目について、どこまで記載すればよいのか公益法人が判断に迷うことも多々ありました。

公益法人制度改正以降は、公益認定申請書や事業報告等の定期提出書類に記載する事業内容に記載すべき取扱が公益認定等ガイドラインにより明確となりました。

記載項目としては、以下の項目となり、事業の規模や詳細設計など公益法人の毎年の経営判断で行われるべき事項は、事業計画等に気鋭することを原則とすることになりました。

  • 公益目的事業の趣旨・目的
  • 事業概要
  • 受益の機会
  • 受益者の義務
  • 事業の合目的性確保の取組

以下、上記項目について解説を行います。

事業をまとめた理由(必要な場合)

公益認定申請書や事業報告等の定期提出書類に記載する事業内容については、事業の実態を踏まえ、同一の趣旨・目的の下、密接に関連して実施される事業は1つにまとめることになります。

なお、公益法人制度改正以前は、「複数の事業をもとめた理由」について記載することが実務上必須となっていました。

しかし、公益法人制度改正以降は、社会通念に照らして密接関連性が自明ではない事業をまとめる場合には、それらの事業の関連性について説明することになりました。

公益目的事業の趣旨・目的

事業の趣旨・目的については、事業の趣旨と目的だけでなく、公表方法、事業の種類(別表該当性)についての説明についても記載することになります。

ここで、「事業の種類(別表該当性)についての説明」について公益法人制度改正前は、別項目として独立して記載していましたが、事業内容の公益目的事業の趣旨・目的に記載することとなりました。

なお、定款の範囲内で、かつ、公益目的事業の具体的な対象や実施地域など公益法人の毎年の経営判断により変更することが想定される事項は、事業計画等に記載することとして差し支えないと公益認定等ガイドラインに明記されました。

事業概要

事業概要には、公益目的事業の内容を端的かつ簡潔に記載する必要があります。

なお、公益法人の毎年の経営判断により変更が見込まれる事項は、原則として事業計画に記載するとともに、実績を事業報告に記載する旨を明らかにすることになります。

また、申請書類の事業は、定款や事業計画等の事業と完全に一致している必要はありませんが、対応関係が明らかとなるように定める必要があります。

さらに、同一の趣旨・目的の下、同種の事業を複数行うことが想定される場合は、事業計画等への記載を前提に、申請書には端的かつ簡潔に記載することになります。

主な記載すべき事業概要

公益認定等ガイドラインを参考に主に事業概要に記載すべき項目は以下のとおりとなります。

  • 公益目的事業の趣旨・目的を実現するために行う事業の類型(検査検定など)
  • 対象となる受益者
  • 税務上の収益事業を公益目的事業として実施する場合は、当該事業を公益目的事業として行う必要性・意義等
  • 記載する事業について類似する事業を営利企業等が行っている公益目的事業としての特徴
  • 事業において発生する知的財産権

なお、以下の事項については、収支予算書、事業計画及び財務諸表により確認できるようにする必要があります。

  • 事業実施のための財源
  • 不可欠特定財団及び公益目的事業実施のために必要な資産
  • 事業を受託により行う場合は、委託元との受託内容
  • 補助金等が交付されている場合は、補助金等の内容
  • 事業の重要な部分を委託している場合には、委託している業務内容

受益の機会

受益の機会には、応募要件や参加要検討を記載し、募集等を行う場合は、募集等の方法を記載することになります。

ここで、申請書に助成対象を「◯◯学その他事業計画に定める分野」とするなど、事業計画等の定めに従い、受益の機会を広げ得ることを申請書に記載することができることが公益認定等ガイドラインに明記されました。

また、応募や参加の条件を特定の属性を有する者に限るなど、受益の機会を特定の集団に限るような場合には、当該条件を付す理由及び当該条件によっても、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することになる理由を記載します。

なお、店舗における物品の販売や劇場における公演など、受益の機会が開かれていることが明らかな事業については、当該項目に記載不要であることが公益認定等ガイドラインにより明確となりました。

受益者の義務

受益者の義務には、対価や受益の条件、その公表方法について記載します。

対価については、申請書には「市場価格より低額とする」「需給に応じた変動価格とする」「国民が気軽に拝観できる価格とする」等の対価設定の原則を記載し、具体的な価格等は事業計画に記載することになります。

なお、頻繁に変更が想定される公益法人の場合は、Webページ等に提示することも可能とされています。

事業の合目的性確保の取組

事業の合目的性確保の取組には、事業の質を確保するための公益法人の取り組みについて記載することになります。

例えば、受益者等の選定を行う事業の場合は、選定方法、公正性を確保するための取込を記載します。

また、事業の実施による重大な不利益が発生する可能性がある場合には、当該不利益を防止・排除するための取組を記載します。

例えば、個人情報を取り扱う事業の場合には、個人情報保護の取組について記載をします。

なお、申請書には、基本的考え方や原則を記載し、詳細は事業計画又は規程に記載することとなります。

公益法人制度改正以降は、申請書には基本的な考え方や原則のみ記載し、毎年変更となるような事項や詳細項目については事業計画等に記載することとなりました。

そのため、公益法人制度改正以前は、事業計画や事業報告の記載形式について公益法人独自に作成しており、公益認定や事業報告等の定期提出書類の申請書に記載されている事業内容との記載との対応関係が不明瞭となっている法人もありました。

公益法人制度改正以降は、申請書と事業計画、事業報告との対応関係を明確に整理する必要があります。

事業計画の関係性についてのイメージ図

公益認定等ガイドラインに記載されている申請書記載の標準化のイメージは以下のとおりとなります。

事業内容,標準化

公益認定等ガイドラインでは、既存の公益法人の標準化された申請書への切り替えを公益法人が今後の変更認定の機会を捉えて行うことができるものとしています。

また、内閣府等の行政庁の監督においては、必要がある場合を除き、期限を定めて切り替えを求めることはしないとされています。

本記事では、2025年4月の公益法人制度改正に伴い、公益認定申請書や事業報告等の定期提出書類に記載する事業内容の取扱いがどのように変わったかについて解説しました。

改正前は、公益法人ごとに異なる記載形式が許容されており、その結果、実務上の混乱が生じることが多々ありました。

しかし、改正後は、公益認定等ガイドラインに基づいた標準的な記載方法が導入され、より一貫性と透明性が求められるようになりました。

特に、公益目的事業の趣旨・目的、事業概要、受益の機会、受益者の義務、事業の合目的性確保の取組といった重要項目について、簡潔かつ明確に原則事項のみ記載し、詳細については、公益法人が毎年の事業計画や事業報告等に記載することとなり枠組みの見直しが行われています。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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