講師交通費の源泉とマイナンバーについて
対象者
本記事は、個人の方に講師料などを支払っている公益法人等を運営されている方向けの記事となります。
概要説明
記事の内容は、個人の方への講師等の報酬とともに支給する交通費について源泉徴収漏れ以外の論点について解説を行います。
個人の方への講師等の報酬とともに支給する交通費の源泉徴収については、以下の記事が参考となりますので、こちらをご参照ください。
源泉徴収制度について
まず、源泉徴収制度について簡単に解説します。
公益法人が、個人に支払う原稿料や講演料などの報酬には、源泉所得税を源泉徴収する必要があります。
ここで、源泉徴収が必要な報酬としては、「原稿料」「講演料」「公認会計士や税理士への報酬」などが含まれます。
公益法人は、これらの報酬を支払う際に所定の税額を控除し、その税額を税務署に納付する義務があります。
報酬を受け取る個人は、源泉徴収税を控除された後の金額を受け取りますが、最終的な税額は確定申告時に調整されます。
このように、源泉徴収制度は、個人の申告漏れを防ぎ、適正な納税制度を維持することを目的としています。
講師交通費の源泉の必要性
前項までで源泉徴収制度について説明を行いましたが、ここで注意が必要となるのが「交通費」の取り扱いです。
公益法人が個人に支払う「原稿料」「講演料」「公認会計士や税理士への報酬」の報酬には、交通費も含まれる場合があり、その場合、交通費も報酬として扱い源泉徴収の対象となります。
例えば、講師に対し報酬5万円と実費の交通費1万円を支払う場合、総額6万円に対して10.21%の源泉徴収を行う必要があります。
ただし、公益法人が直接交通機関やホテルに支払う場合は、源泉徴収が不要です。
支払調書の提出範囲とマイナンバーの取得
公益法人は、同一の個人に対し講演料等の支払いが1月から12月までに5万円を超えた場合、支払者の所轄税務署に対し支払いの確定した日の属する年の翌年の1月31日までに支払調書を提出しなければなりません。
そして、支払調書には、支払先である個人のマイナンバーを記載することになります。
よくある誤解
ここで、よくある支払調書の提出範囲に関する誤解ですが、支払調書は、同一の個人に対し5万円を超えて講演料等の支払いを行った場合に提出する必要があります。
当該5万円は、交通費も含まれます。当然、実費で支払った交通費も対象となります。
これは、交通費が報酬として取り扱われるためです。
マイナンバーの取得時期
最後に、支払調書の提出とマイナンバーの取得時期について説明を行います。
前項で説明したように支払調書には、マイナンバーを記載する必要があります。
公益法人の場合、多くの個人の先生に都度、講師を依頼するケースがあります。
そのため、公益法人としては、できる限り講師の先生の手間となるようなマイナンバーの提出作業等は避けたいという法人もあります。
マイナンバー取得時期分類
そのため、実務的にマイナンバーの取得時期としては、以下の4パターンが想定されます。
- 年間の講師料が5万円を超えた場合に個人番号を取得する。
- 年間の講師料が5万円を超えることが確実になった時点で個人番号を取得する。
- 年間の講師料が5万円を超えるか否か明らかではないが個人番号を取得しておき、5万円を超えない場合には、個人番号を廃棄またや削除する。
- 年間の講師料の金額に関係なく、支払調書を提出することにし、金額に関係なく、一律に個人番号を取得する。
私の経験としては、マイナンバーの不要な管理を回避するため、「年間の講師料が5万円を超えた場合に個人番号を取得する」という例が一番多く、年間の講演スケジュール等が確定している公益法人の場合は、「年間の講師料が5万円を超えることが確実になった時点で個人番号を取得する」という運用も散見されます。
上記の4つのタイミングのうち、どのタイミングで個人番号を取得しても構いませんが、法人の事務負担やルールの容易さなどを検討のうえ、処理方法を検討することが望まれます。
結論
本ブログでは、個人の方への講師等の報酬とともに支給する交通費が報酬として取り扱われることに関連して源泉徴収漏れ以外の論点について解説を行いました。
「非課税交通費」とされる給料等の実費相当の交通費だけが例外的な取り扱いであり、税法等の考え方は、「交通費は報酬である」という考えが理解できれば、すべて同様の取り扱いで整理が可能なります。
関連記事
関連サービス
公益法人会計基準を適用しての記帳代行や税務相談を依頼をご検討の場合は、こちらのページにサービス概要を記載しております。
公益法人の決算書作成や財務三基準等について依頼をご検討の場合は、こちらのページにサービス概要を記載しております。