【公益法人の役員の同一団体規制】

公益法人,同一団体規制

記事の対象者

本記事は、「公益社団法人」、「公益財団法人」の事務局の方、理事や監事を対象としています。

なお、本記事では、「公益社団法人」と「公益財団法人」を総称して「公益法人」と記載しています。また、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」を「認定法」と呼ぶことにします。

記事の概要

本記事は、公益認定の要件の1つである役員に対する同一団体規制の概要を説明するとともに、実務において判断に悩む事項の解説を行います。

また、当該公益認定の要件を満たすために公益法人としての対応方針についても記載しています。

公益法人の役員の同一団体規制とは

公益認定の要件の1つに以下のような条文があります。

他の同一の団体理事又は使用人である者その他これに準ずる相互に密接な関係にあるものとして政令で定める者である理事の合計数が理事の総数の3分の1を超えないものであること。監事についても、同様とする(認定法5条1項11号)。」

これは、公益法人の役員の3分の1が他の同一団体の役員や職員などで構成することを禁止するものであり、公益法人が他の団体に実質的に支配されることを防ぐことを目的としています。

ここで、当該要件については、各要件について個別に検討が必要となるため、実務上、問題になることが多い論点について以降で解説を行います。

最初に、要件に記載されている「他の同一の団体」の範囲について解説します。

まず、役員や職員が所属する他の団体に法人格がある場合は、法人単位で判定を行います。したがって、株式会社など法人格を有する法人については、当該法人単位で同一の団体として扱います。

また、法人格を有しない場合として国の機関や任意団体(人格なき社団、権利能力なき社団)が想定されます。ここで、国の機関や任意団体についても同一の団体として取り扱われます。

ここで、株式会社の子会社や親会社などのグループ会社がある場合にグループ全体で同一の団体として扱うべきかという疑問が生じます。

グループ会社については、同一団体規制が法人単位で検討することとなっていることから、同一の法人でなければ、グループ会社の役員や従業員で公益法人の理事や監事の3分の1以上を構成することは可能となります。

前項までで、他の同一の団体の範囲について解説を行いました。

次に、「理事又は使用人」の範囲について解説します。

「理事又は使用人」についてですが、例えば株式会社であれば取締役などの役員や従業員が想定されます。

なお、ここでの役員や従業員とは、現職である場合のみであり、過去に役員や従業員であった者は含まれません。

また、単なる名誉職であり、実際は役員ではない者も含まれません。しかし、報酬や給料を得ている場合には、使用人として判定される可能性があるため、個別に検討が必要となります。

最後に、「その他これに準ずる相互に密接な関係にあるものとして政令で定める者」について解説します。

まず、当該要件には、当該他の同一の団体の理事以外の役員又は業務を執行する社員である者が該当します。例えば、株式会社の監査役や合同会社の業務執行社員などが該当します。

また、国の機関、地方公共団体等の職員である者等も該当します。なお、国の機関については、省庁単位で同一の団体と考えることになりますが、法人の目的、事業が国全般に関係する場合には国の機関全体で考えることとなることが示されており、判断が困難なケースも想定されるため、個別に確認が必要となります。

ここまでの解説を踏まえ事例を1つ紹介します。

学術団体の場合、大学の教授などで構成されることが多く、同一の大学に所属している教授の役員数が3分の1にならないように注意が必要となります。

また、その際に名誉教授をどのように扱うかが問題となりますが、名誉教授は、職位ではなく、大学等に教授等として勤務した者で功績のあった者に対して授与される称号であるため、当該大学の役員や職員としてはカウントされません。

ただし、名誉教授以外で何等かの報酬等を大学から受領している場合には、使用人等に該当しないか個別の検討が必要となります。

公益法人は、必ず理事会を置く必要があるため理事は必ず3名以上必要となりますが、監事は1名か2名の場合があります。

このような場合、監事が3名未満のため、公益法人の同一団体規制について3分の1という概念をどのように考えるべきか疑問が生じます。

以降、監事特有の役員の同一団体規制について解説します。

監事が1名の場合

公益認定の要件は、監事の「合計数」が、監事の総数の3分の1を超えてはならないとされています。

ここで、合計とは、2つ以上の数値をまとめることであり、監事が1名の場合は、2つ以上の数値がないため「合計数」という概念を用いることができません。そのため、監事が1名の場合は、役員の3分の1規制は適用されないことになります。

監事が2名の場合

次に、監事が2名の場合は、各監事が別の団体に属する者である場合は、監事が1名の場合と同様に合計数という概念を用いることができないため、役員の3分の1規制は適用されません。

しかし、監事2名が他の同一の団体に属している場合、2つの数値を合計することができるため、合計数という概念を用いることが可能となります。

そのため、監事の総数が2名であり、監事2名が他の同一の団体に属する場合は、役員の3分の1規制に抵触することになります。

上記の公益法人の同一団体規制は、公益認定基準の要件の1つであり、うっかり満たしていなかったということは許されません。

そのため、公益法人の運営にあたり慎重な対応が必要となります。

まず、最低限実施することは、役員の改選時に新任、重任含めすべての役員から兼職届出を提出してもらい、兼職状況の確認と他の同一団体の所属状況を確認する必要があります。

また、役員の兼職状況は、いつ変わるかわかりません。そのため、可能であれば、役員改選時だけでなく、役員に定期的に兼職状況に変化がないことを確認することが有用となります。

特に、公益法人の同一団体規制をギリギリ満たしているような公益法人の場合は、理事会の都度、確認する等の対応が必要と考えます。

本記事では、公益法人の役員に対する同一団体規制について、その概要と実務上のポイントを解説しました。

同一団体規制は、公益法人の役員が他の同一団体の役員や職員で構成されることを防ぐための重要な要件であり、公益認定基準の1つとして常時この要件を満たす必要があります。

そのためには、役員の兼職状況を継続的に確認し、適切な管理体制を整えることが求められます。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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