【公益認定のスケジュール】

公益認定

記事の対象者

本記事は、公益認定申請を行い、公益法人になることを目指す一般社団法人や一般財団法人の担当者向けの記事となります。

公益法人としては、「公益社団法人」と「公益財団法人」がありますが、総称して「公益法人」と記載します。

記事の概要

本記事では、一般社団法人や一般財団法人を設立後に公益法人になるための実務的なスケジュールについて解説します。

公益認定とは

まず、公益認定について簡単に説明を行います。

ここで、公益法人は、公益性を確保するため、一定の基準を満たす必要があります。

当該基準は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条で定められています(以下、「公益認定基準」とします)。

また、同法律第6条に欠格事由に該当しないことも必要となります。

公益認定基準や欠格事由の詳細については、別のブログで説明を行いたいと思います。

本記事では、公益法人になるためには、一定の基準を満たす必要があるとだけ理解して頂ければ問題ありません。

このように、公益法人になりたい一般社団法人及び一般財団法人は、公益認定基準を満たしていること、欠格事由がないことを確認してもらうために行政庁に申請を行い、公益認定等委員会による審議が行われ、審議の結果に基づき行政庁より決定通知が行われます。

これらの手続きを「公益認定」といいます。

では、公益認定の実務的なスケジュールについて解説します。

なお、本記事の記載は、一般的な内容をモデル化したものとなります。

実務上は、法人ごとに異なる論点があるため、当該論点に応じてスケジュールを柔軟に対応する必要があります。

準備期間(3ヶ月から6ヶ月程度)

まず、公益認定に必要とある申請書類を作成する前に、公益法人となるための準備を行う必要があります。

しかし、公益法人を目指す前の法人運営は、公益認定基準を意識せずに行われていると推測されます。

そのため、当該申請を行う前に、公益法人になった後を想定し、公益認定基準を満たす体制作りが必要となります。

ここでは、典型論点である「事業」「組織体制」「管理体制」「財務」の4つの視点から説明を行います。

「事業」の見直し

まず、公益法人を目指す場合、事業の見直しは必須となります。

公益法人が実施する事業のうち、公益目的事業として認められるためには、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律で定められている23種の事業のいずれかに該当する必要があります。

そのため、当該23種の事業に既存の事業が該当していない場合には、事業の方針の見直しも検討する必要があります。

23種の事業(一部参考)

以下、例示として、23種の事業のうち、学術系や若者支援、教育系の団体でよく記載されている事業について列挙します。

  • 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
  • 文化及び芸術の振興を目的とする事業
  • 公衆衛生の向上を目的とする事業
  • 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
  • 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
  • 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
チェックリスト 助成(応募型)の例示

また、公益目的事業については、当該事業の公益性を判断するためのチェックリストが容易されており、当該チェックリストの項目に対して要件を満たすような事業内容の構築が必要となります。

参考までにチェックリストのうち、「助成(応募型)」事業のチェック項目を記載します。

NOチェックポイント
1当該助成が不特定多数の者の利益の増進に寄与することを主たる目的として位置付け、適当な方法で明らかにしているか。
2応募の機会が、一般に開かれているか。
3助成の選考が公正に行われることになっているか。(例:個別選考に当たって直接の利害関係者の排除)
4専門家など選考に適切な者が関与しているか。
5助成した対象者、内容等を公表しているか。(個人名又は団体名の公表に支障がある場合、個人名又は団体名の公表は除く。)
6(研究や事業の成果があるような助成の場合)助成対象者から、成果についての報告を得ているか。

このように、上記で説明した23種の事業及びチェック項目の要件を満たすように事業の見直しが必要となります。

なお、公益法人の実施する事業については、以下のブログでも解説をおこなっておりますので、こちらも参考にしてください。

【公益法人が実施できる事業とは】

「組織体制」の見直し

次に、公益法人を目指すにあたり組織体制の見直しが必要となるケースもあります。

例えば、以下のような検討が必要となります。

  • 役員構成の見直し(役員構成が3分の1を超えて親族等や同一団体のメンバーで構成されていないことなど)
  • 過大な役員報酬の見直し
  • 監事の経理経験の確認
  • 社団法人の場合は、社員の資格や議決権に関して不当な差別的扱いの見直し
  • 理事会の設置など、必要な機関設計の見直し

また、組織体制については、「事業」の見直しと連動して行う必要があるケースもあります。

例えば、事業の見直しと関連し検討する組織体制としては、奨学金の支給を公益目的事業として実施する場合に、奨学生を選定するための選定委員会を新たに設置するなどの対応が想定されます。

「管理体制」の見直し

さらに、公益法人を目指すにあたり管理体制の見直しも必要となります。

ここで、管理体制の見直しとしては、法人運営に関するルール作りが必要となります。

最初に、公益認定申請に必要となる定款について公益法人を前提とした内容に変更が必要となります。公益認定申請のための定款については、以下のブログにも解説を行っていますので、参考にしてください。

もちろん、公益認定に必要となる定款は必須項目ですが、それ以外にも規程等の見直しが必要となります。

特に、少数のメンバーで運営している法人や新設の法人の場合、「暗黙のルール」はあるが、当該ルールが明文化されていないというケースが多々あります。

このように明文化されたルールがない場合は、審査にあたり、説明が困難となるケースもあるため、法人運営に必要となるルールは、申請前にすべて整理しておく必要があります。

事前準備が必要な規程例

ルールとして明文化すべき規程の例としては、法人の公印を管理するための「公印管理規程」や法人内の経理や管理の実務ルールを明確にした「経理規程」などを作成しておく必要があります。

これらの規程は、公益認定申請にあたり必須書類ではありません。

しかし、法人運営に必要なルールであり、当該ルールが曖昧な場合、公益認定基準の1つである「公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること」という要件を満たしていないという判断をされる可能性があります。

なお、上記の規程は、例示であり、実務上は、その他、必要となる規程を一通り完備する必要があります。

「財務」の見直し

最後に、公益認定申請前の準備作業として「財務」について解説します。

ここで、公益法人は、財務三基準と呼ばれる以下の3つの基準を毎期満たす必要があります。

  • 収支相償
  • 公益目的事業比率
  • 遊休財産保有制限

上記の3つの基準については、以下のブログで内容の説明と対応策を記載していますので、こちらも参考にしてください。

このような、財務三基準については、公益認定申請前に検討が必要となります。

そもそも、当該基準を満たすことができない場合には、申請そのものが困難となる可能性があります。

また、上記の財務三基準以外にも公益法人は、他の団体を支配することが制限されているため、議決権を有する株式を保有している場合には、保有資産の見直し等が必要となります。

公益認定申請書類作成(1ヶ月程度)

公益認定申請書類の作成は、上記までで説明した準備作業と同時に行うことになります。

しかし、公益認定申請書類作成時のポイントととして、当該書類は、将来の事業計画と予算をベースに書類作成が行われるという特徴があります。

そのため、公益認定申請用の事業計画と予算を作成する必要がありますが、当該予算については、準備期間の項目で記載した事業や組織体制などが前提となります。

このような関係性から、準備期間で検討した事業や組織体制等の内容は、申請にあたり非常に重要な前提となります。

理事会等の決議・申請書の提出

公益認定申請書類の作成が完成後、理事会の承認等の必要な機関決定を行い、行政庁に申請を行います。

行政庁対応・審査(6ヶ月から1年程度)

行政庁への申請後、数カ月間、行政庁からの質問に対して対応を行います。申請している法人により公益認定にあたっての論点が異なるため、当該対応期間は、法人により幅があります。

公益認定等委員会による審議

行政庁との質問対応後、公益認定等委員会に諮られます。

公益認定等委員会は、月に1度程度で開催されているため、行政庁の質問対応完了後、1ヶ月程度期間を要することになります。

答申・決定

公益認定等委員会の審議において公益認定基準に問題がなければ、答申がなされます。

当該答申をもって公益法人となることが確定と考えて問題ありません。

その後、本認定申請に対する決定通知が行政庁より行われます。

名称変更の登記

決定通知後、法人格が「公益社団法人」「公益財団法人」と変更になるため、名称変更の登記を行い公益認定申請業務が完了します。

公益認定申請書類を作成し、提出するだけであれば、1ヶ月程度で対応可能かもしれません。

しかし、公益認定申請後の行政庁対応、公益法人になった後の法人運営を考えると申請前の準備期間が非常に重要となります。

公益認定申請においては、準備期間を含め1年から2年程度は、期間を確保し、公益法人になった後に後悔しない事業や組織等の体制の見直しを行うことが有用となります。

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この記事の監修者

               

株式会社アダムズ/堀井公認会計士事務所
代表取締役 堀井淳史
公認会計士・税理士・行政書士

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